Kyon {Silence Of Monochrome}

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2011/01/06

写真集「捨猫」

荒木経惟氏の「チロ 愛死」は、本屋で心臓をぐっと掴まれてから、
私の本棚に大切な一冊として置いてあります。
本当ならば、たった4ヶ月で亡くなったあずきも、
枯れるまで生きてほしかったし、
わさびや、新しく家族となれたくるみも、
よぼよぼになって、もう私たちの事がわからなくなってしまうとしても、
生きて生き続けて欲しいと思い、それが私たちの望みです。


先日、また心臓を鷲づかみにされました。
「捨猫」という写真集です。
我が家の猫が通う病院に置いてあり、私は待合室で衝撃を受け、
しばらく思考が停止してしまいました。

世の中に、猫の可愛らしさや愛くるしさを絶えず放出し、
その魅力を伝えようとする写真集は星の数ほどあります。
しかし、ある「真実」を教えてくれる本はそうそう出会えません。
そういう意味で、「チロ愛死」は私の中で、
私が知るべき「現実」を露わにしてくれていた1冊ゆえに、
私の本棚に並ぶ本の中でも大事な1冊となっています。
しかし、このチロちゃんは、大切な家族として一生を終える事の出来た
ある意味、数少ない幸運な猫ちゃんだったと思います。
人間にただ好奇心や興味本位だけで飼われ、
飽きた等というような、身勝手で理不尽な理由で捨てられて、
その後の過酷な運命を必死で生き、あげく、
のたれ死んでいく多くの命の「現実」と「真実」が「捨猫」という写真集には
刻銘に、痛烈に、しかし愛を持って映し出されていました。

「臭いものには蓋をする」事に、私たちは慣れて行き、
見なくてもいいものは見ないに越したことはない中で平然と生きている。
斯く言う私自身も・・
しかし、あずきが亡くなり、痩せて小さくなった亡骸を抱いた時、
この子の兄弟の事、母親の事をふと考えました。
もしこの子と同じ病に犯されていたら、
兄弟たち子猫はきっと生きてはいけないだろう。
そうでなくても、外には危険がいっぱいある。
車や病気、動物虐待・・・
私は縁があってあずきと出会えたが、
それでもたった一つの命さえ救う事が出来なかった・・・

命の重みをあずきが自らの命と引き換えに教えてくれました。
その教えは、私には抱えきれないぐらい大きくて神々しいものです。
そして彼は、自分達のようなか弱くて小さな命が、
この世界でどのような扱いを受けているのかも訴えかけてきたように思えてなりません。

今の微力な私には、真実を「見て」「知る」ことしかできませんが、
それでも、今後知らないで生きていくのと、知って生きていくのでは、
全く人生の重みが違うと思います。
私の力で今、救え愛していけるのは、わさびとくるみだけです。
しかし彼女たちの背後にある無数の無念な魂に、
私は悲痛な感情を抱かずには居られません。
人間の欲と傲慢さの犠牲となった無垢な命に、
私には掛ける言葉も探せません・・・