Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
上記をクリックするとKyonイラストのホームページとなります。ぜひご覧ください。

2019/03/08

アゲハとキアゲハ 38 キーちゃんの旅立ち

3月6日 曇り空。

その日もキーちゃんは自発的に蜜を吸った。キーちゃんは蜜を吸うとき、口吻を脚でおさえながら吸うことがあった。
器用に両脚で顔を洗う姿がかわいいと思った。
今日で54日目、二か月くらい一緒にいられるかもと思っていた。

蜜を吸うキーちゃん。
ネットの側面につかまって運動するため、
翅はほとんど傷んでいませんでした。

夕方、キーちゃんを見ると、ネットにくっついたまま、前脚だけが胸のあたりに引き寄せられていた。
翅は広がったままだ。アゲハ蝶はリラックスしているとき翅を広げたままにしていることが多いようだが、もう日が暮れて暗い部屋の中で、その様子は妙だった。
触ってみると、ネットからはらりと落ちてしまった。
キーちゃんは亡くなっていた。

蜜の濃度は大丈夫だった。3日に羽化したツマグロヒョウモンのたまちゃんも同じ蜜を吸って元気にしていたからだ。

確かに日を追うごとに動きが鈍くなったり、蜜を吸う時間が短くなってきたことは感じていたが、まさか逝ってしまうなんて…。


蝶はいつも静かに旅立つ。
魂がすっと抜け出ていくように。


身体が魂のいれものだとしたら、蝶ほど、その魂が去った後も美しいものはないのではないかと思う。
それほど、キーちゃんは美しかった。

手にとると、それは空気のように軽かった。
儚く切ない重さだった。


54日を共に過ごした。蝶のいる日々はやはり特別な日々だ。
羽化させてしまったのは私が未熟だったせいだ。やはり大空を飛び、子孫を残したかったのではないだろうかと思うと、胸が苦しくなる。

{キーちゃん、ありがとう。
あなたと過ごせて、アゲハやキアゲハのことがもっとよくわかったようです。
お疲れさま、そしてまた、戻っておいで。}

小さくて丸い顔、大きな黒い目が本当にかわいらしかった。


春も近づき、パセリも徐々に成長しだしてきた。
また彼らの子孫を育てよう。そして大空の煌めく宝石となってもらおう。