Kyon {Silence Of Monochrome}

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2020/01/18

アゲハとキアゲハ 38 どこへ?

昨年もたくさんの蝶とともに過ごした。
ツマグロヒョウモンたちは、彼らのために用意した「スミレガーデン」をすっかり認識してくれたようだし、
愛らしいシジミチョウ、風格のアゲハもたくさん来たし、育てた。

しかし、明らかに、2018年とは変化があった。
2019年、ついにキアゲハが来ることはなかった。

キアゲハ。
アゲハより一回り大きくすこし毛深いが、ファーをまとったようなゴージャス。
セリ科の植物=パセリや三つ葉などを好み、それら食草はやや地上の下部分に生えているためか、低い位置をゆっくりと優雅に飛ぶ姿は、貴婦人が散歩をしているかのようだ。
気高いアゲハや気難しいアオスジアゲハなどと比べて、お子様の頃から人懐っこささえ感じてしまう、可愛くてそれは美しい蝶。

かれらのためにパセリの鉢植えを何鉢も用意し、スーパーで売っているものや安価な苗では予期せぬ事態が大体おこってしまうため、無農薬販売の業者も何件か記憶しておき、さあ来い!と待ってはいたが…。
彼らの美しい姿を見ることはなかった。

いったいこの地域で何が起こったのか?
考えられるのは、かれらの食草に何かが起こったということだろうか。
セリ科の植物はパセリやニンジン、三つ葉など、ニンゲンが育て口にするものが多い。
その栽培がこの地域で昨年は減ったのか、無くなったのか、
もしくは農薬をたくさん使用したのか…。

小さなかれらにとっては、そうした些細な出来事が生態系に大きく影響してしまう。
とにかく、2018年にはたくさん卵を産みに来たキアゲハが、2019年には一匹もこないというのは寂しいのを通り越して、不安にさえなるのである。

2018年にたくさん撮った彼らの写真を複雑な想いで見つめた。
見つめながら考えた。
この地球全体を覆う気候変動。もう異常気象とは言わないらしい。異常な事態が常態化してしまったからだ。
そして地球は次のフェーズに入ったという。

年々熱くなる日本の夏は猛暑ではなく、もはや酷暑で災害級だ。
その夏にオリンピックがやってくる。
そして台風。暴風の15号と豪雨の19号は、本当に恐ろしかった。
家を揺らした暴風の轟音はトラウマとなり、今でも風が強い日は気分が不安定になる。
一日続く大雨によって近くの川が氾濫するのではないかと、心底恐怖したのも人生で初めてだった。
これがそれだけで終わる現象とはとうてい思えない。今年も来年も、
その次も、私たちはこれからさまざまな脅威にさらされるのだろう。

ふと、姿を消したキアゲハと私たちの姿が重なった。

キアゲハ…君たちにいったいなにがあったの?
今年は希望の光が訪れてくれるだろうか。
逆境にも負けない、たくましい姿を。
わたしたちは元気だったよと、どうか美しい姿を見せてほしい。
そして彼らの子供たちとたくさん過ごしたいのだ。