Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
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2024/11/24

小灰蝶の詩 ~シジミチョウの飼育記録~



繊細な点描で描いたヤマトシジミ(大和小灰蝶)



シジミチョウはどこにでもいる、一見地味な小さな蝶だ。

けれどもライトブルーの翅を広げ日光浴をしている姿はとても美しく、楽し気に両翅をこすり合わせてクリクリと動かす姿は他の蝶にはない愛らしさがある。

地表近くを光の瞬きのように軽やかに舞う姿も美しい。

幼虫はカタバミを食草とし、成虫もその黄色い花に誘われてよく蜜を吸っている。


2024年1月31日、最後のシジミチョウが旅立った。
羽化してから1カ月ほどだった。仲間は20頭以上育った。
朝方、ハチミツ水の近くで口吻をシュルシュルと出しているので、よっこいしょとハチミツ水をふくんだティッシュの上に移動させると、おいしそうに飲んでいた。
しかしそのままの姿で、お昼過ぎには青い空へと帰って行った。

いつものように、静かな蝶の死だった。そして心がじわりときた。
シジミチョウとははじめて一緒に年を越して、小さなケースの中で日光浴をしていた姿が愛らしかった。

寂しさが迫ってきたせいだろうか、彼らのことを書いておきたいと思った。


シジミの卵ループに入る

カタバミの鮮やかなグリーンにポチっと産み付けられるこの蝶の卵はとても小さいが、慣れてくると容易く見つけられるようになる。

私はシジミチョウの幼虫が好きだ。ぽってりとしていて、丸々太ったフォルムが草餅のようで、なんともかわいくて。また葉っぱをゆっくりムニムニと食べる姿も味がある。

孵化したての幼虫は本当に極小で、肉眼で確認するのは困難、ルーペを使って観察するのだが、それでも見つからないことも多く、小さなケースに食草を用意したら、数日経った頃に幼虫を間違ってつぶさぬよう、また捨ててしまわぬよう、注意深く見ながら糞などの掃除をする。

その食草だが、カタバミはどこにでもあり、家のプランターにもこぼれ種でどんどん増えていくので、採集は難しくない。しかし、取ってきたカタバミに新たな卵が必ずと言っていいほどついてくる。その卵もぞんざいにできずに育てることになる。それが繰り返されて、最初3匹ほどだった幼虫が、秋の終わりには20匹以上になっていた。



成虫のお世話は難しい?

幼虫もそのうち小さな蛹となる。スリッポンに似たような形で転がったままなる子もいるし、蓋の上でなる子もいる。面白いのは二匹で寄り添そうように蛹になる子たちもいることだ。

まだ暖かさの残る秋の初めは成虫になればそのまま放蝶し、次の世代へと夢を託す。

ただ晩秋も冬の足音が近づく頃、12月にもなると外には出せなくなってくる。

冬、ルリタテハやキチョウなど成長で越冬する種もあるが、シジミチョウは成虫では越冬できない。

去年は12月末に羽化した2匹と年を越すこととなった。

これまでやはり同じように冬に羽化したアゲハやツマグロヒョウモンのお世話をしてきたが、シジミチョウは初めてだった。

問題はゴハンをどうやってあげるのか。

ツマグロヒョウモンはとても飼いやすく、前脚にハチミツ水を近づければシュルシュルと口吻を出して吸ってくれる。

アゲハはツマグロヒョウモンのように自動的に吸ってはくれないので、ちょっと工夫が必要だった。最初のうちは翅をそっとつまんで体を固定し、丸まった口吻を楊子でまっすぐにしてハチミツ水に近づけなければならなかった。これが毎回、結構難儀だった。慣れてくるとハチミツ水を近づければ口吻を出して食事してくれる場合もあった。


さてシジミチョウは?

まさかあの小さな体をいちいちつまむなんてできないし、口吻は肉眼でみるのも難しい。

試しにツマグロヒョウモンにやるようにティッシュに含めたハチミツ水を近づけてみたが、パタパタと逃げるだけで自分で吸う気がない・・・。


いろいろと調べてみると、ケースの中に餌場を設ければ自分で吸ってくれるらしい。

本当だろうか?
中には外で草花を摘んできて吸わせているという記事もあったので、かろうじて咲いている小さな菊の種類の花やハルジオン、育てているビオラなどを摘んできてケースの中にいれてみた。


お日さま、そして暖かいのが好き

大きめのケースを用意し、蓋の隙間から出てしまわないようにガーゼで保護(過去に脱走歴有)。
そこにペットボトルのキャップにハチミツ水を染み込ませたティッシュを水分ヒタヒタ加減で数個用意。摘んできた花々も小さな花瓶に入れて設置。

しかしシジミは、しばらく見ていても一向に吸う感じがなく、動こうともしない。
どうやら光と気温が関係しているらしい。
そこで、まずは飼育ケースを温風で少し温めてみた。するとケースの温度上昇とともにシジミもハタハタと動き出した。
飛んだり跳ねたりすると偶然にペットボトルキャップのハチミツ水に着地する。そこで気が合えば蜜を吸うということらしい。
光も大好きなので、日光浴をさせるのがベストだった。光に合わせて翅を広げる美しい姿をゆっくり観察できたのはありがたかった。
温度も上昇して動きやすくなるし、光に誘われて元気に飛び回る。
その間に蜜を吸うことも覚えて、私が目視できなくても彼らは食事をしてくれているようだった。
そして工夫を凝らしながら生活しつつ、2週間、3週間と時が過ぎていった。

4週間くらい経った頃、ついに先に羽化した一頭が空へと帰り、ケースの中は少し寂しくなった。
冬も一層厳しくなってきて、小さな菊もハルジオンもとうとう姿を消してしまった。
小さなビオラや香りのよいネメシア、購入した小菊などでシジミを退屈させないようにして?、蜜もこれまで通り用意した。

雌のシジミはとうとう色が褪せ翅先もボロボロになってしまったけれど、最後まで元気に暮らしていた。
かくれんぼが上手で、花と花の間でどこにいるのかわからなくなり、焦ったこともあった。
餌場を覚えて自分で食事してくれるシジミチョウは、確かに飼育しやすい蝶であったといえる。

ただどの子にもいえるのは、やはり青空と太陽が一番似合っているということ。
外では一瞬にして命を落とすこともあるかもしれないけれど、それでも健気に、遥かに大きな世界へ旅立つ姿はこの上なく神々しい。

私には到底できないことを彼らは小さな体で、ずっとずっと繰り返している。
その命の輝きが本当に眩しいくらいだ。
そうした彼らが舞う空の青さを、地上の尊さを、けして忘れてはいけないと思う。



宝物はすぐそこに、いつでもそばで輝いている。
その光の一粒でも、ペンとインクで描けたら…。
それが今の私の夢だ。


2022/09/02

くるみ バリウム検査の結果

 くるみ、2日間嘔吐を繰り返し、水も吐いたのでとうとうバリウム検査となった。

午前中に預けて夜にお迎え。

初めての検査なので飼い主が異様に緊張している・・・。

なにもないことを願ってひたすら耐える半日。


くるみはスムーズにバリウムを飲んでくれたという(5-10ml)

胃に入ったバリウムは3時間たっても胃に滞留したままだった。異常だ。

小腸にもたくさんガスが溜まっていた。食道は問題なし。

そこで腸を動かす薬(プロナミド)とラキサトーンを与えたところ、流れ始めたという。

バリウムが胃に滞留したままでは身体も弱っていく。もしもこれが夜だったらER案件だったかも…と言われた。

ひとまず危機は回避したがどうやら胃と腸の間の幽門に問題があるようだ。

何らかの要因で壁が厚くなってしまっているのか、腫瘍なのか。

はっきりさせるためにはやはり内視鏡をやるしかないらしい。

しかし内視鏡は大学病院での処置となり、その前の検査も必要となる。

費用は総額で15~20万。猫の体にも、金銭的にも大きな負担・・・・・・・・。


頭の中が真っ白になりそうなのをこらえて、必死で先生の言葉を脳内メモする。


くるみがドライフードを食べなくなった理由は好みの問題ではなく、身体に問題があったことだけははっきりした。

そしてドライフードを受け付けなくなる頻度は高まってきている。

今、デンタルケア用の大粒ドライは1-2個をサクサクおいしそうに食べているが、通常のドライフードは吐いた記憶が嫌悪学習になってしまっているのかさっぱり食べなくなってしまった。(ガルシア効果)

そして幽門の問題が浮上してきたからには、無理をしてあげる必要もないだろう。


しかし不安なのは、この幽門の症状(狭窄?)が今後さらに悪化し、完全に詰まってしまった時どうするのかということだ。

そういった可能性はなくもないという。

{緊急でかかる病院は不安定だ、ならばまだまだ元気なうちに、適切な処置をしてあげた方がよいのではないか?

しかし大学病院は遠いし、本当にお金がかかる・・・}

そうこう考えていると頭がぐるぐるしてくる。


現在、医師の指導のもと、プロナミドとラキサトーンを与え1週間ばかり様子を見ることとなった。

プロナミドが効いているのか、今まで雷鳴のように響いていたお腹の音がパタッと止んだ。

食事はバリウム2日後はもりもり食べたが、次の日はあまり進まない。

うんちはバリウム検査二日後に良いウンチが出たが、白くなかった。

そういうこともあるのだろうか?


ビビりのくるみは意外にも病院でチュールを食したという。その数、3本。

お皿からだと食べなかったが手からだと食べたんですよ、と先生。

なんと手間をかけてしまった。

好物のエネルギーチュールをたくさんもらえてちょっとは心許してくれたのだろうか。

レントゲン撮影では身体を緩めるなど終始協力的だったという。

がんばったね、くるみ。。。


次はBUNの値とクレアチニンの値を見るために病院へ。

どうか下がっていてほしい。



わさびが旅立ってから、さらなる試練。

実はわさびはくるみのこのことを知っていて、

これからは彼女が大変だよ、よろしくね、と言わんばかりにスッと旅立っていった。

そんな風にさえ感じている。






2022/08/30

くるみ バリウム検査する

 わさびが旅立ってからひと月過ぎ、ふた月めも過ぎようとしている。

なんだか人生にぽっかり穴が開いてしまったよう。辛くて寂しい日々。


同じサビ猫で来月12歳になるくるみも、12月から体調を崩して食が細くなり、8カ月で1キロあまり体重が減った。

それまでは4キロと丸々太っていて「まるみ」ちゃんとか、「でぶみ」ちゃんとか呼ばれてたりもしたのに、すっかりスリムになってしまった。もともと小顔なのでモデルのようだ。

それまでメタボリックスという太ったねこちゃん用のごはんを飽きずに食べていてくれたくるみ。

昨年11月の検診の時、もう11歳になるからごはんはシニア猫用がいいのですか?と聞き、その時の医師が深堀もせずに良いのでは?と即答されたので、鵜吞みにしてしまいシニア猫用のフードにガラッと変えてしまったのがそもそもの原因だ。

新しいフードが体質に合わなかったようで、くるみの猫生初めて大量に嘔吐してからドライフードを嫌がるようになり、試行錯誤でウェットフードに切り替えたが量もカロリーも足りず、その時に不調となった腸の状態も釈然としないまま、それまで吐いたこともなかった毛玉も含め時々嘔吐を繰り返すようになってしまった。


新しい病院の先生は、

「歳をとったからってフードを変える必要はない。

そのフードがその子に合っていて、気に入って食べているならわざわざ変える必要なし。

特に長年食べているとそのフードに身体が慣れている。

変えるときは一粒二粒から始めるんですよ」

・・・と。


目から鱗とともに、言葉がガンと突き刺さった・・・。


全て私の無知が悪い、そしてよく考えずに話を鵜吞みにした自分も。

今日の今日まで、ああ、なんでフードを変えてしまったんだろうと、

後悔に後悔で頭は渦巻のよう。


12月の不調以来、くるみのお腹はずっとギュルギュル鳴っている。

ひどいと2メートル離れていても耳に届く。こんなにも猫のおなかって鳴るんですか??


毛玉が悪さしている可能性もあったので、毎日毛をかき、毛玉ケアフードを食べさしたり、ラキサトーンを試したり、心因性で舐めてしまうかもということでジルケーンというサプリを1カ月試したりした。

毛玉を吐く回数は減らなかったが量がぐっと減ったので、毛かきとジルケーンはある程度効いたのかもしれない。

ジルケーンは検証するためにいったん止めてみることにした。


痩せてしまい華奢な体になってしまったくるみを見て、毎日毎日、心が不安だった。

あんなに丸々と健康そうで、ぽっちゃりしていたのに。悲しかった。


そして8月28日、くるみは久々のドライフードを食べたあと、10時間後に未消化フードと水分を大量に吐いた。

そしてその8時間後にも水分だけのねっとりとした茶色い液体を大量に吐いた。

更に次の日朝ごはんに食べたチュールもすべて吐いた。


食事の質と回数に注意しながら、時には病院にも通いながら、なんとかやってきたが、

もう限界だ。


急いで病院に電話して、その日の午後に診察。

血液検査、触診とレントゲン、エコー。

触診ではお腹が張っているとのこと。

レントゲンでは小腸にガスがすごく溜まっている。動きが悪そうだと。

エコーはガスが溜まりすぎて、よく確認できず。

血液検査ではBUNが89、クレアチニンが2.8と1カ月前より上昇。

これは脱水によるものではないかという。

その日は補液を50ml行い、閉塞が無さそうであれば吐き気を止めて食事を取るのも必要とのことで、制吐剤のセレニアを打ち、帰宅。

セレニアを打っていても吐くようであれば以上だからそこも見たいということだった。


さらに問題を追及するため、ついにバリウム検査となった。

午前中に病院へ向かい、夜迎えに行く。


猫のバリウム検査は初めてだ。

そして自分若い頃のバリウム検査を思い出す・・・。

あのまずいものを大量に飲むのにすごく苦労した。

その前に、お腹が空きすぎてついお菓子を食べてしまい、正直に検査の人に行ったら怒られたっけ・・・。

バリウム後の便秘も嫌だったので、それ以来私は何か不調があれば胃カメラを飲むことにしている。


バリウム検査後の診断はもちろん、バリウムが腸で固まってしまわないか、重度な便秘になったらどうしようと、なんだか不安でたまらない。


どうか、どうか、何もありませんように。













私の無知が悪かったのだと、心から後悔している。



2022/07/08

不思議な偶然

 あっという間に梅雨が終わりカンカン照りの日が続いていた6月下旬。思えばこの急激な暑さも老猫にはこたえたのだろう。

それなのに、わさびが旅だった日は暑さがやわらぎ、朝からシトシト雨が降り、次の日、わさびの火葬の日も曇り空からやがて静かな雨空となった。

私にはわさびの涙雨に見えて仕方なかった。


わさびが旅立ったその瞬間も、家人が病院から帰ったわずか5分後だった。

もし病院での滞在時間が長引いていたら間に合わなかったかもしれない。


こじつけと言われればそれまで、偶然といえば偶然だろうだけど、

これまで数々奇妙な話を聞いてきて、こういう不思議なことはあるのかもしれないと感じている。


不思議な偶然の一致はもうひとつ。

わさびとの出会いは14年前、とあるお店に貼り出してあった里親募集に私が連絡を入れたのがきっかけだった。

その時なにかピンときたのだろう。

猫と暮らすための、はじめての応募だった。


そのお店はいつも良い香りのするペット用品店だった。ホームセンターとはまた違った品揃えで、時々利用させてもらっていたが、コロナ禍に入り外出がままならぬ中で、お店にも足が遠のいていた。

そしてコロナのあおりを受けたのか、そのお店は今年の春に閉店してしまった。


お店がなくなったのを見て、残念と共に寂しさを感じた。

このお店の貼り紙がなかったら、わさびとは決して会えなかったのだと思うと胸がつまる。


そして同じ年に、わさびも虹の橋を渡った。









2022/07/07

わさびの思い出 1

 私が部屋で、畳んだ布団にもたれかかって休んでいるとき、

「わさび~」と呼ぶと、しばらくしてどこからともなくやってきた。

かわいい声で鳴くと、私の体をよじ登って布団の上に行く。

ふかふかしたものが大好きなわさびは、布団に身体をうずめて満足そうに「んにゃ んにゃ 」と鳴く。

そして私にほおずりして、鼻やほっぺたを何度も舐めてくれた。

ツンデレわさびの愛情表現。

こうして私に添い寝してくれるのだった。



当たり前だが、今は呼んでもわさびは来ない。


それでも呼んでみる。


幽霊でも幻覚でもいいからでておいで。



面影と触感を思い出しながら寂しさの中で、

なかなか夜眠れない私はうとうとしてくる・・・。