Kyon {Silence Of Monochrome}

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2025/04/13

ツマグロヒョウモン ツマオさん:紅葉から桜まで175日の奇跡

 ツマオさんと名付けたその美しい蝶は、保護してから175日の翌日に空へと帰っていった。

心にぽっかり、穴があきました。



25/4/11 ツマオさん 後ろ翅も綺麗です


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ツマオさんとの出会いは2024年の10月中旬、秋も入口の頃だった。

駐車場で動けなくなっている蝶を見つけたと母から教えられ確認しに行ってみると、ツマグロヒョウモンのオスがコンクリートの上でじっとしていた。

右側の翅がつけ根あたりを残してサクっと切り取られたようだった。

その頃カマキリを見かけていたのでカマでやられたか、それともどこかでぶつけて切ってしまったのか、触覚も半分切れてしまっていた。


うちでは毎年、ビオラやスミレに着いたツマグロヒョウモンの幼虫を保護しながら育てている。10月も半ばに来ると、次々と蛹から羽化し成虫になっていくので、じっとしていたその子もうちから出た子だろうと推測した。


翅が片方ないので飛べないし、このままでもかわいそうなので、飼うことにした。

ツマグロヒョウモンの飼育は案外楽で、蜜さえ用意すれば自分で吸ってくれる。

蜜はハチミツをかなり薄めたものを一日一回与えた。


ツマオさんはのんびりとしていて翅を忙しなく動かすということもないので、プラスチックの飼育ケースの壁面にペーパータオルをつけ、ティッシュをふんわり敷いてお世話した。

日光浴が大好きでふわふわと翅を動かす姿がとてもかわいらしい。

面白い癖があって、蜜を与えると吸いだすのだが、お腹いっぱいといったん口吻をしまおうとして、クルクルと出したり引っ込めたりを何回か繰り返し、さんざん悩んだ挙句におかわり!とまた吸い出すという。

これまでお世話してきてあまり見たことのない光景だったので、とても印象的だった。


おいしそうに蜜を吸うツマオさん


この蝶がそれから175日・・約半年ほども生きるとは、7年ツマグロヒョウモンを見続けてきた自分としても驚きだった。


普通の成虫や羽化不全の子だと、元気な子は飛び回るので、洗濯ネットで作成したソフトケースでも翅は徐々に痛み出し、リボンのようになってしまうか、ほとんどなくなってしまうこともある。

しかしツマオさんの翅は保護当時と変わらず美しいまま、旅経つ時も変わらず。


25/3/30 ツマオさん

紅葉が始まる頃から桜が散る今まで、一緒にいてくれたことに感謝するとともに、久しぶりに消失感を感じている。

ペットの火葬現場では時々虫の火葬も行われるというが、なんとなく頷けてしまう。

それだけ半年の間、心のささえになってくれていたのだろう。


175日は保護した時からの日数なので、彼がどのくらい外で生活していたかがわからないため、もっと生きたということかもしれない。

とにかくこんなにご長寿なツマグロヒョウモンは初めてだった。


美しくて、強くて、幼虫も成虫も愛嬌のあるツマグロヒョウモンが、私は本当に大好きだ。


春になり越冬してきた小さい子供たちが姿を現すようになった。

我が家のスミレも芽吹き、かわいい花を見せている。

かれらのために無農薬のビオラも冬からたくさん育てている。

毎年母蝶が卵を産みに来てくれる。それこそシーズンになると毎日のように。

母蝶を見ると皆ほとんど翅がボロボロだ。そして時々、力尽きた蝶も目にする。

子孫を残すのはそれこそ命がけなのだということを感じる。

規模は小さいけれど、この大きな循環をずっと大切にしていきたいと思う。


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ツマオさん、今までほんとうにありがとう。

これからは好きなだけ空を飛び回ってください。

そして、かわいい彼女にも会えるといいね。