Kyon {Silence Of Monochrome}

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2019/05/23

ツマグロヒョウモン 73 母ツマはなぜ枯葉に卵を産む?

季節も初夏の様相となり、晴れて穏やかな日は蝶たちが忙しく飛び交っている。
ずば抜けて飛翔力の高いアオスジアゲハは、クスノキの上の方でひゅんひゅんと飛び、アゲハチョウは柑橘系の木を求めて、あっちへいったり、こっちにきたり。
小さな小さなシジミチョウも、開けば美しいその翅をパタパタと動かしながら頑張っている。
蝶好きにとっては嬉しいシーズンだ。

そしてある晴れた日、愛しきツマグロヒョウモンのお嬢様が、ふらりと我がベランダにやってきた。
風が少々そよぐ程度の穏やかな日、美しい翅を広げて優雅に滑空してみては、旋回してビオラの鉢植えに戻ってみたりと、なんとも楽しげである。
なんといっても、彼女の一大仕事は卵を産み付けること。
私の存在を気にすることもなく、あちらこちらを確かめては、彼らの食草に産み付けていく。しかしそれがなんだかおかしい。
彼女はおもむろに鉢の奥の方に潜っていくと、おしりをくっつけているのだが、それがほぼ枯れた葉っぱなのだ。
ひどいときは床に降りて、そこらへんに転がっている枯葉に産み付けている!
これはレスキューせねばと、時間が許す限り彼女の動向を見ていた。

メスのツマさんは我が鉢植えだらけのベランダを気に入ってくれたらしく、ふわりふわりと飛びながら長く滞在してくれた。ツマグロヒョウモンのために育てているスミレの鉢もそこかしこにあったのだが、それには目もくれず、なぜかビオラの枯葉に産み付けていく…。
あとで枯葉を確認し、卵を採取。みつけたのは全部で8個。このこたちを養育すると決めた。かろうじて、スミレの新芽に産み付けられたものもあったので、それはそのままにしておいた。

アゲハは必ず、レモンやキンカンの新芽に産み付けていく。一枚一枚脚で確かめ、それはそれは大事そうに…。
しかし、ツマグロヒョウモンはなんてきまぐれなんだろう。
やってきた母ツマは枯葉以外に、食草でない葉っぱにも産み付けていた。
食草付近の土にも産み付けていくことがあるので、孵化した子供たちがかなりタフということなのか…。
ともあれ、またツマグロヒョウモンたちと過ごせる夏がやってきた。

5日ほどして卵7個が孵化した。黒いトゲトゲ幼虫も最初はふわふわとした産毛の赤ちゃんである。

孵化したて。産毛がふわふわ。

孵化してから何回かの脱皮後。ようやくトゲトゲとしてくる。

***************

晴れた日は毎日のようにツマグロヒョウモンがやってくる。どこかから噂を聞きつけてくるのだろうか?あそこはご飯もあるし、育児施設もあるそうよ・と。。

目の前で卵を産み付ける母蝶。

二頭の美しい蝶がベランダを舞っている光景には、なんだか胸にこみあげてくるものがあった。
スミレやビオラなど花を育てて約1年半、待ちに待っていた光景だった。
そして母ツマたちは私がいても構わずあちこちに産卵する。目の前で産み付けていく時もあった。人なつっこい蝶である。
もう寿命が来ていて枯れるばかりのビオラに産み付けられたものなど、回収した方がよい卵は回収し、無農薬のスミレや若いビオラに産み付けられたものは様子を見ることにした。


そして今日、キンカンの鉢植えの根元で一頭のツマグロヒョウモンが亡くなっているのを発見した。翅がきれいなまだ若そうな蝶だったが、お腹はぺたんこだった。根元にはスミレがこぼれ種で育っていた。仕事を終えて、天寿を全うしたのだろう。
身体をそっと持つと、空気のようにふわっと軽かった。
お疲れさまと声をかけた。