あっという間に梅雨が終わりカンカン照りの日が続いていた6月下旬。思えばこの急激な暑さも老猫にはこたえたのだろう。
それなのに、わさびが旅だった日は暑さがやわらぎ、朝からシトシト雨が降り、次の日、わさびの火葬の日も曇り空からやがて静かな雨空となった。
私にはわさびの涙雨に見えて仕方なかった。
わさびが旅立ったその瞬間も、家人が病院から帰ったわずか5分後だった。
もし病院での滞在時間が長引いていたら間に合わなかったかもしれない。
こじつけと言われればそれまで、偶然といえば偶然だろうだけど、
これまで数々奇妙な話を聞いてきて、こういう不思議なことはあるのかもしれないと感じている。
不思議な偶然の一致はもうひとつ。
わさびとの出会いは14年前、とあるお店に貼り出してあった里親募集に私が連絡を入れたのがきっかけだった。
その時なにかピンときたのだろう。
猫と暮らすための、はじめての応募だった。
そのお店はいつも良い香りのするペット用品店だった。ホームセンターとはまた違った品揃えで、時々利用させてもらっていたが、コロナ禍に入り外出がままならぬ中で、お店にも足が遠のいていた。
そしてコロナのあおりを受けたのか、そのお店は今年の春に閉店してしまった。
お店がなくなったのを見て、残念と共に寂しさを感じた。
このお店の貼り紙がなかったら、わさびとは決して会えなかったのだと思うと胸がつまる。
そして同じ年に、わさびも虹の橋を渡った。