Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
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2011/08/12

イルカの日

この作品は以前聞いたラジオで紹介されていて、
見るのにはいささか心の準備が必要な作品だと感じていた。

痛烈に悲しい作品だと、冒頭から感じて、苦しかった。
イルカの姿がそれは神々しく、和やかで美しくあるほどに、
悲しく切なかった・・・


これは、イルカの知能の高さと信頼感、「心」そのものを、
私利私欲のために利用しようとする、人間のエゴのおぞましさを描いた作品。

前半の、博士とイルカの、愛に満ちた交流が心を揺さぶるだけに、
後半は胸が締め付けされるように、辛かった。

研究所で産まれたアルファというイルカが、その知能の高さゆえに、
人の言葉を理解し、話し始めた時から、悲劇は始まっていた。

自分の名前を呼ばれて、
けなげに 「ファー!」 と返事をする姿・・

「ファー パパ 大好き」
と言って、博士の足に愛らしくすり寄るアルファの姿・・

恋人のビ―と別れ別れにされ、猛烈に怒りながら、
「ビー 今すぐ かえして」 と、懇願する姿・・

どれも胸に迫る。


人を信頼し、人の言葉を信じるが故に、
暗殺利用目的で誘拐され 、爆弾を装着される姿・・
人はこの時、恋人のビーをも利用する。
恋しい、愛しい、守りたい・・という心そのものを利用しようとする。

そして、最後は人に追われる身となり、
安全の為に、大好きな博士と、永遠の別れをしなければならなくなった。
「ファがいるから パパはいじめられる」と聞かされ、
 寂しそうな表情をうかべて、
「 ファー 行く 」と・・
そして、いつまでも、博士を追う姿が、
福島原発事故により、20キロ圏内でやむを得ず置いて行かれた、
かつての犬や猫や牛、馬、鶏などの悲しい姿と重なる・・

イルカだけではなく、私は全ての動物達には「心」があると思っている。
そして、それを信じる人にとっては、
この作品はあまりにも悲しい。
きっと、原発事故により亡くなっていった多くの動物達も、
その死の直前まで、もしかしたらそれ以後も、ずっと、
飼い主さんの事を信じて待っていたのかもしれない。


この映画は映像や音楽が素晴らしいが、
ただそのイルカの魅力=賢さと愛らしさを表現しただけではない。
その無垢で純粋な魅力が、
生物の頂点に立ったかのような奢りと傲慢さで、
権力の為には、何でも利用しようとする人間のおぞましさをより恐ろしく、
増幅させる。


嘘ばかり言う人間に対して、ファーは言う。

「人間 無い事ばかり 言う」

それでも、人を信用し、愛そうとするファーやビ―の姿を、
むしろ、人間が真似し、学ぶべきではないかと思う。


昨今、とある水族館で、イルカが稽古中にジャンプの着地を誤って、
胸を強打し、亡くなったというニュースがあった。
悲しい事故だった・・
狭いプールの中で、人に芸を見せるためだけに産まれてきたわけではないだろうに・・
私はこのような事故が二度と起こらない事を、本当に心から願う。

そして私達は、自分達の私利私欲や娯楽、興味のために、
不必要な命を犠牲にはしていないだろうか・・と
いつも心の中で問うていく必要があると思う。