Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
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2010/01/18

針と糸と感性と














とても美しい刺繍の作品です。
これは、連れ合いの祖母の若い頃の作品だそうです。
このような繊細でダイナミックな美しい刺繍作品が、
実家に多数飾ってあります。
それを始めてみた時は、本当に驚きました。
祖母は現在80歳を過ぎていて、とても元気で明るい女性です。
今は作成していないようですが、
聞けば、これらの刺繍作品はデッサンから配色まで全て行い、
一日中針を刺して、3、4日で出来てしまうというのです。
これにも驚きました。
見れば、本当に細かい糸で緻密に配色され、
豊かな色彩を奏でています。
作品の中には、故郷である栃木の原風景の作品もありました。
正直を言いますと、この素朴で朗らかで、人懐っこい笑顔のお婆さんから、
このような相当な労力と根気とセンスを要する作品が生まれたとは・・という驚きがありました。
自分、まだまだ相当甘いな・・と反省したのも事実です。

以前帰郷した時には、
その祖母が、庭で拾ったという玉虫の死骸を見せてくれました。
3㎝もある大きなものから、1㎝くらいの丸っこいものまで、
いろいろな形の玉虫が、大事そうにお皿に入れてありました。
そして、これを持って帰れと言います。
「綺麗だから、持って帰れ」と。
たしかに、マイナスのイメージで使用される「玉虫色」とは全く異なる、
深い紫と鮮やかなグリーンに金色を品良く添えたような、
それはそれは美しい光を放っていて、
作りもののブローチのようにも見えました。
虫はどちらかというとあまり得意ではないのですが、
「持って帰れ」と言われて、素直に「いいんですか、ありがとうございます!」
と言ってしまうほどの美しさがありました。
東京ではまず見れない姿ではないでしょうか?
そして、玉虫の死骸を美しいから大事に取っておく、
そんな祖母の屈託のない感性を、
私は全く真似できないと思い、
私が絵描きとして足りない部分だと思いました。

この美しい刺繍作品を見る度に、胸に迫るものがあります。
こういう作品こそ、もっと多くの人に見てもらいたい、
そして、いつかそういう機会をこの作品達に与えられたらと願います。
身近に良き師がいるということは、
本当に恵まれたことだと思います。