最近、縁あって様々な職種の方とお話できる機会を得られました。
人は皆、生きていく為に一生懸命仕事をして、
1日の半分以上、1週間のほとんどを費やすのですが、
その中でも、専門職でずっとお仕事されている方々のお話は、
面と向かってめったに聞けるものではないので、
狭い中で生きている私にとって、
それはとても楽しく驚きや感動が沢山詰まっています。
先日は寿司職人の方のお話を聞くことが出来ました。
職人というと、どの世界でも「職人気質」というものがあり、
私個人の中で、気難しいという感じや、
頑固という感じがイメージとしてどうしても拭えないのですが、
今回お会いした方にも、最初はそのような「職人気質」を勝手に感じていて、
おっかなびっくりお話を伺っていました。
しかし、ご主人に握ってもらった美味しいお寿司に強張っていた顔も解れ、
普段、緊張すると食べれなくなってしまう私でも、
殆どを食してしまう程でした。
お話を聞いているうちに、当のご主人も、
職人としての1本筋の通ったプライドと気質を持ちつつも、
笑顔の素敵な、優しくて気さくな方だというのが分かりました。
「職人」という言葉にずっと先入観を抱いていた私にとっては、
ちょっとした驚きでもありました。
お寿司は大好きなのですが、
マグロとカツオ以外は殆どネタの種類を知らない私に嫌な顔もせず、
生簀に泳いでいた魚を見て、
ある魚を指差して「この魚はなんですか?」
と尋ねた時に「アジだよ、それぐらい覚えなさい」
と優しく言ってくれて、
最後には魚の本など2冊も貸して頂き、自分のあまりの無知ぶりに、
自分で呆れつつ、そのお気遣いにすっかり恐縮していました。
どの世界でも、これときめて、ずっと続けている人には、
特別な輝きや魅力があると思います。
そして、その苦労と努力と費やした多くの時間の上に成り立っているその知識を、
知識の無い者に惜しげなく優しく教えてくれる姿に、
本当の自信とプライドと、あるべき「仕事」の本来の姿を見るような気がします。
時にはそんな姿に、憧れさえ抱いてしまいます。
しかし、実際に職人の方や、専門職で頑張っておられる方の話を聞くと、
私のイメージは単に幻想で、「となりの芝生は緑」という諺のように、
実情はもっと違う事も分かります。
現実に翻弄され、想像以上の苦労や努力、忍耐を重ねている、
一筋縄では行かない難しい道だというのを感じます。
私の凡人感覚で言えば、好きな事を生業として生きていければ、
それはそれで素晴らしく、
しかもその仕事が人を助け、あるいは人を感動させ、笑顔にするものであるならば、
同じ苦労を重ねる上で、やはり「となりの芝生」に憧れてしまいます。
たとえそれが「生業」にならなくとも、
自分が自ら選んで進んで苦労して努力でき、
それを楽しめるものがあるという事は、それだけで素敵な事だと思います。
「絵を描くこと」、それは私にとって「仕事」ではありませんが、
ライフワークとして、死ぬまで続けて行きたいものです。
絵を通して人の役に立とう、とは今の自分ではおこがましくてとても言えませんが、
昨年作品集を作ったことで、あとがきに、
絵を描く喜びを最初に教えてくれた亡き祖父母への感謝を記し、
それを読んでくれた親戚がとても喜んでくれた事は嬉しい事でした。
現在、運良く様々なプロフェッショナルの方のお話を聞けたという事が、
自分の中で新たな財産となり、
これからも、大きな懐の「職人気質」に憧れ続けて行きたいと思います。
そして、いつか私も「絵を描いている事」を自分の中で誇れるようになりたい、
という思いが、果てしない旅路で私を勇気づけ、支えてくれるように思います。