Kyon {Silence Of Monochrome}

Kyon {Silence Of Monochrome}
上記をクリックするとKyonイラストのホームページとなります。ぜひご覧ください。

2019/06/27

ツマグロヒョウモン 76 美しき輪舞

猫は猫好きがわかるという。
同じように、蝶は調好きがわかるのではないだろうか。
そう思う瞬間がある。




我が家のツマグロヒョウモン、次々と羽化している。
今日は49号のメスが飛び立った。このこは蛹になった直前、食糧不足のために仲間に側面をかじられてしまったこ。
軽傷で済んだのだが、その影響か、片方の触覚が無かった。
しかし美しい蝶にはかわりなかった。

(ちなみに、蛹化直前に痛手を受けた個体は、羽化のタイミングが早い気がする。
この時期の羽化は約10日かかるが、このこは19日早朝に羽化し27日に羽化に至ったので、9日で羽化したことになる。前回もそうだった。)



彼らを見つめていると、様々なドラマに遭遇する。

***
先日の羽化ラッシュではメスが3頭のオスが1頭だった。
彼らは虫かごからだしても、気が乗るまでは飛ぼうとしない。
元気の良いメスの蝶がいち早く威勢よく飛び立った。
飛び立つ瞬間、私の視線の奥に、立派なオスの姿が。
さらに前、羽化したオスだろう。彼女が飛ぶと同時にそのオスも飛び立ち、
くるくると円を描きながら二頭で大空を舞った。

このこが旅立ったその瞬間、その先に。


この姿、胸に深く、ジーンときてしまった。
それは姫を迎えに来た、白馬の王子のごとく、ロマンチックな光景だった。


***
昨日は午後、外で園芸作業をしていた。
そこに、一頭のツマグロヒョウモンのメスが優美にふわりふわりとやってきた。
そして私のすぐそばにとまった。こちらを向いてなにか挨拶をしてくれている感じだったので、私も心と声で{こんにちわ}と言うと、彼女はまたふわりと飛び立っていった。
もしかしたら…というかおそらく、私が育てたツマグロヒョウモンだったのだろう。
私のことを覚えてくれていたのだろうか。
そうだったら嬉しい。そしてそう、思いたい自分がいる。

こちらはオス。飛翔力は高い。オレンジ色が青空に輝く。

翅は裏も美しい。


***
そして今日、曇り空で少し風の強い午後だった。
外にでると、一頭のオスが舞い降りてきた。
そしてそれを追いかけるようにメスのツマグロヒョウモンがやってきて、
2頭がくるくると円を描きながら、私のそばにやってきた。
目の前で繰り広げられる、その優雅で可憐な輪舞に、思わず眼が釘付けになってしまった。

{ なんて美しいのだろう この風景をいつか描いてみたい }

その後、メスが地上に降り、誘うようにその美しい翅をふわりふわりと動かすと、それに見惚れるかのようにオスが向かい合い、翅を小刻みに動かした。
そしてメスがふわっと舞い上がるとそれを追いかけるようにしてオスが飛ぶ。
そして上空でくるくると、そのロンドは続いた。
お互いが生まれたこと、そして出会ったことへの喜びを、小さな身体いっぱいに表しているようだった。


***
悲しい出来事もある。
外の鉢植えのそばで不可解な死を遂げている仲間が数匹いた。
それは無残な状態だった…。病による死には見えない。残留農薬の影響か。
ビオラは植え付けしてから10カ月も経つと安全になる場合があるが、
そうでないものもあるようだ。
たぶん、浸透持続力の強い農薬を使っていたのではないだろうか。そこまでは私も分からない…。ただこの時期になってもアブラムシが少なく、他のイモムシもつかないような状態の株は、そうである可能性が高いように思う。

その中で安全な無農薬スミレを食べて、無事に蛹になったこもいた。
そのなかの一匹は、ベランダの隅から隅に歩き、スチールラックの上部で蛹になっていた。目視できたのは昨日、とても驚いた。
蛹は環境に合わせて色目が若干変わるようだが、このこは錆びたスチールラックで蛹化したので、蛹の色目も少し錆色になっていた。それがまたアーティスティックで素晴らしかった。

小さな体でえっちらほっちら長い距離を歩き、頑張った集大成。
ここからさらに羽化までが最大の難関で大仕事。


6月上旬くらいに一斉に抜かれたスミレも復活してきている。
今度は余計な雑草が無くなったおかげで日当たりが良くなったようで、成長が早く葉色も良い。
なんともたくましい植物である。
そして春には華奢で可憐な花を魅せてくれる。
愛しきツマグロヒョウモンの食草でもあるこのスミレが、私はとても好きである。