先日自転車で井の頭公園に行きました。
夕方だったので、燃えるような夕日が井の頭の木々を赤く染め、
いつものようなゆったりとした時間に情感を添えていました。
男の人が、立ち止まって何やら一生懸命見ています。
私も気になって遠目からそっと見ていたのですが、
男の人が振り返って教えてくれました。
「カワセミがいますよ」
指差す方向を見ると、美しい1羽の青い鳥が優雅にたたずんでいます。
カワセミでした。
いつだったか、体調を崩してずっと病院通いをしていたことがありました。
原因も解らず、しかし調子が悪いので、気分もふさぎこんでいたのですが、
ある日、病院へ行くために自転車で川辺を走っていると、
青い宝石のような輝くものがちらりと視界に入ってきました。
カワセミでした。
午前中のまだ若々しい日光に羽を輝かせて羽ばたいていたのです。
一瞬の出来事でしたが、青い鳥は幸運の鳥というイメージが、
私を元気付けてくれました。
「なんか良いことがありそう、検査の結果もきっといいはず」
それから、体調は不思議と回復の方向に向かいました。
病は気から、という言葉がありますが、あながち嘘ではない気がします。
特に私のような、単純なのに考え過ぎ症候群のような者には、
些細な幸せの象徴が、気分をがらりと変えてくれるようです。
井の頭で男の人が教えてくれたカワセミも、
過去のそのような記憶と共に、私の心にささやかな幸せをくれました。
しかし本当に幸せだったのは、
見ず知らずの人が親切に声を掛けてくれてカワセミを教えてくれた、ということです。
人間同士の不信感や人間関係の希薄さなど、
冷たい風がいよいよ強くなってきたなと思う現在、
このような事は奇跡に近いように感じてしまうのは、
私自身が冷え切っているからでしょうか。
本当の「青い鳥」は人の心の中にいる、
そう思えた幸せを頂いた1日でした。