Kyon {Silence Of Monochrome}

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2018/06/11

ツマグロヒョウモン 57〜 ミコちゃんの旅立ち、そして次の命。

ここ二日間、雨が続く。ずっと降りしきっている。

空が私のかわりに泣いてくれているようだ。


ミコちゃんは美しいツマグロヒョウモンのメスだ。
南国情緒漂う色彩がいつもいつも素晴らしかった。
我が家の「姫様」だった。

ミコちゃんとの出会いは思い出深い。
昨年の12月。川沿いのスミレが一掃されてしまい、コンクリートの壁面にただ一匹取り残されていた幼虫。
彼女を見つけたのは薄暗い夕方、冬の寒いころだった。
他の仲間はおそらく、スミレと一緒に除去されてしまったと思う。
このままでは越冬もできず凍え死んでしまう。
大事に大事に、1センチほどの小さい幼虫を持ち帰った。

冬場はわずかに残ったスミレも枯れていることが多く、食べれる葉を探すのに苦労した。
ほうぼう、あちこち歩き回った。
現在は見事に川沿いのスミレは再生し、あふれんばかりに繁っている。


9日からミコちゃんは様子がおかしかった。一番心配したのは小刻みに震えていること。
それでも、夕方ハチミツ水を吸った。それが最後の食事となった。

10日、ミコちゃんは仰向けになっていた。
夜中に力尽きたのだろうか…。前日は側面にくっついていた。

前日、お休みの挨拶の時、呼びながら指を差し出してみると、ミコちゃんは方向を変えて近寄ってきてくれた。
彼女はきっとわかっているのだと思った。いや、そう思いたかっただけかもしれない。

ミコちゃんは星になっても、美しかった。
仰向けになった彼女をそっともとに戻した。そしてティッシュをしいた紙の箱に移すとき、柔らかい翅が風でふわりと動いた。まるで生きているようだった。
ツマグロヒョウモンは後ろ翅も美しい。光に当たるとキラキラと光る。
ミコちゃんの翅も、朝日を浴びてキラキラと光っていた。

3月から種まきし、最近咲き始めたコスモスと、冬場から咲いているビオラで花束を作り、箱に入れた。


ミコちゃん、どうか安らかに…。

ありがとう。

あなたはとても美しかった。

これからは思う存分、空を飛んでください。


ツマグロヒョウモンとの付き合いが始まったのは、この絵を描いた2カ月後でした。
それまでは、なかなかカメラにも収まらない憧れの蝶でした。
憧れの蝶だからこそ、この手で描きたいと思ったのでした。

今では、私のなかでいちばん身近で、思い入れの深い蝶となりました。


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最近、嬉しい便りがあった。
昨年9月に種をまき、3月にようやく芽吹き、育ったスミレに、新しい命をみつけたこと。
トゲトゲと見掛け倒しのいかつさがなんとも愛嬌のある、小さなツマグロヒョウモンの幼虫だ。

ツマグロヒョウモンの母蝶よ、今あちこちにスミレが茂っているのに、
よくぞここまで来て、卵を産んでくれた。
あなたがせっかく選んでくれたスミレなのだけど、残念ながらとても小さい株なので、
私がこのこを責任をもって養育します。
そして蝶になったら、夏の大空を颯爽と羽ばたいてもらいます。
オレンジの鮮やかなツマグロヒョウモンは、やはり真夏の空が似合うから。