心の整理をつけるためには、書くことがよいこともある。
わさびの右足の付け根付近の、柔らかくのびる皮膚の中にその小さなシコリを最初に見つけたのは、家人だった。
わさびは機嫌のよい時、猫用トイレの上にのって「肩揉みをさせろ」とせがむ。
家人や私がそばに行き肩を近づけると、両手を伸ばし、肩揉みをしながら伸びをする。
とても愛らしいしぐさだ。その時に家人が、彼女の足付け根付近の皮膚のたるみを触っていて、発覚したのだった。
2月上旬のこと。ツルリとした感じの小さなシコリで嫌な感じはしなかった。
しかし、猫のシコリは侮れないというので、その約1週間後に病院へ。
針生検をしたがその時は脂肪腫と診断。
その後、シコリは日を増すごとに大きくなっていく。
あまり触ってはいけないと思いつつ、肩揉みタイムの時や、わさびがわざと顔に乗ってくるときなどにふと触れてみると、その都度、なんだかシコリの様子が変わっていく。
最初の異変はもう一つ、小さなシコリがそばにできていたこと。
米粒より小さいものが、その後本体のシコリとつながり、合体した。
その頃には明らかに大きくなっていて、触感もごつごつとしており、私は違和感と不安感に苛まれた。
ネットで検索しいろいろと調べると、頭がぐらつくような記事をいくつも目にした。
{いやいや脂肪腫といわれたではないか。しかし、でも、でも、違和感がある}
不安に押しつぶされそうになり、一人で涙にくれたこともあった。
でもここで、わさびを守るべきニンゲンが萎えていては、守れるものも守れない。
気持ちを切り替えて、まずは再検査だと考えた。
そして4月も中旬になる頃、事前に事情を話し、わさびを連れ家人と病院へ。
結果は、やはり…というものだった。
確定はまだできないが、今回の針生検ではシコリの組織がもう少し取れ、良い感じのしない細胞がでてきたという。結論から言えば、線維肉腫の疑い。
シコリは約二ヵ月で5mmから25mmに。五倍になっていた。
幸い深部にまで達してはいないという。オペをするならなるべく早く、ここ1~2週間でということだった。
それまで、あらゆる情報をまさぐり、不安や恐怖に何度も脳天を突き刺されて、ある程度覚悟はしていたが、それを聞いた時にはさすがにショックを受け、全身の信号がフリーズして、逆に無風状態となってしまった。
これからの反動が怖い。
悪性疑いが強いため、シコリはかなりのマージン(範囲)を取って切除することになるが、タイミングとしては一刻も早くというのが実情だろう。
13才8か月という高齢。繊細でとても華奢な猫だけど、これから巨大化しその身体を蝕むものをほうっておくわけにはいかない。
私も家人も、手術に異論はない。
・・そしてこのシコリにはある禍根がある。
私たちが無知で愚かだった。それにつきる。
それは10年前に遡る。
あの日に打った、4種混合ワクチンのことだ。
ここでは記さないが、今であれば調べればいくらでも出てくるだろう。
しかしそれが原因とは言い切れず、わさびが相応な高齢にさしかかったということもあるだろう。
だが肉腫を誘発する疑いがあるというのなら、これから猫ちゃんと生きようとする方には、そこは絶対避けて通ってと声を大にして言いたいのだ。
私たちは押しつぶされそうなほど「あの日」を後悔をしている。
そして辛くても目を背けず、向き合わなければいけない。
なにより今現在、一番病と戦っているのはわさびなのだから。
彼女にとっての最善を、一生懸命、考えなければならない。