Kyon {Silence Of Monochrome}

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2018/01/15

ツマグロヒョウモン~3頭のツマさんたち(羽化不全と保護したこ)24~ 懐かしい脚音 

1月15日
今日も晴れ。そして気温が暖かい。
しかし気持ちは、このすがすがしい青空とは違ったものだった。

ツマサブロウさん、45日目。
昨日から様子がすこしおかしかった。
夕方、はちみつ水をあげようとしても吸おうとせず、ひっくり返ると弱弱しい翅の動きで元に戻ることができなかった。
ひっくりかえったサブロウさんに丸めたキッチンペーパーを近づけると、それに脚をのばしつかまって元に戻ることができた。
ツマジロウさんとは、そのキッチンペーパーに捉まったままの姿でさよならをした。

今日、ケースを覗くと、同じ状態で佇むツマサブロウさん。
眼をみると偽瞳孔でこちらをみているようだった。それで生きていると思っていた。
しかし、日光を浴びても、ツマサブロウさんは動くことはなかった。

昨日、ふっとツマサブロウさんの思い出が蘇ってきたのは偶然だろうか。
その名の通り、虫の知らせだったのだろうか。

もう大きな虫かごのなかには誰ひとりいなくなってしまった。
あの、キッチンペーパーを歩く、カサカサというかわいい脚音を聞くこともない。
この音は、猫たちも大好きな音だった。


よっちゃんの羽音が、今日はいつもより心にしみた。
あとどのくらい、このこと一緒に入れるだろうか。

よっちゃんは朝ごはんを食べたあと、しばらくじっとして、
透明な水玉のきれいなおしっこをした。
ハタハタと翅を動かし、元気にネット内を歩き飛び回っていた。



また川沿いを歩いた。
多くのツマグロヒョウモンや生き物たちを育んできたスミレは、
12月中頃にぞっくりと抜かれ、緑も何もない寂しい道が延々に続いているようだった。
片側の道路沿いにあるノヂスミレやタチツボスミレも、道路工事の灰をかぶり、
また同じように抜かれてしまっていた。

10月、私はこの道を歩くのが好きだった。
羽化する前の蛹を発見したり、時々羽化した直後の蝶たちに会えたからだ。
しかし今、この道を歩くたびに、私は陰鬱な気分になる。
その寂しさや悲しみは、この町の、誰にも理解されないかもしれない。
町や道路が美しく整備されることが、人々の喜びであり、望みなら。

今年の春には、もうオレンジ色の美しい蝶たちは姿を見せないかもしれない。
春に空を舞い次の命を育むはずだった越冬幼虫は、スミレが抜かれたと同時に排除されてしまっただろうから。

そんなことすら、人々は気にかけないかもしれない。

しかし私にはそれがつらい。


昨年の秋、川の上を一頭のツマグロヒョウモンがゆうゆうと滑空していたその情景を、
私は今でも忘れていない。
そして時々、現実世界では飛べなかったツマオさんやツマコさん、ツマサブロウさんやツマジロウさんが、翅を広げオレンジ色をキラキラさせながら、同じように舞う姿を夢見る。
みんなここで生まれたんだよ、そして、君たちの大切な食料や子供たちが、ニンゲンのためにいなくなってしまった・・ごめんよと、
何度も何度も思う。